認知症  
認知症について
アルツハイマー型認知症の症状
2010/10/18(月)



アルツハイマー型認知症は認知症の中で最も多い原因疾患で約50−60%を占めると言われています。日本社会の高齢化に伴い、今後さらにアルツハイマー型認知症の患者数も増加すると予測されています。


アルツハイマー型認知症の症状は

①中核症状(ほぼ全ての方に共通しておこる症状。生活能力低下と言い換えても良い)

②周辺症状(個人差があり、出る人と出ない人がある。問題行動と言い換えても良い)

の2つがあります。このように症状を区別して整理することで、それぞれの方の特徴が分かりやすくなり、治療の方向性も決めやすくなります。


中核症状

以下のような症状がほとんど全ての患者さんに共通して出現します。ただし症状の出てくるタイミングは人によって異なります。

1)記銘力障害

いわゆる物忘れで、新しいことが覚えられないために同じ質問や話を繰り返すことで異常に気づかれます。記銘力障害が最も初期から認められ、症状の中心となる存在です。加齢に伴う物忘れとは以下に述べる2)から4)の中核症状が合併するかどうかで区別することができます。遠隔記憶と言われる昔の記憶は比較的保たれます。

2)見当識障害

自分のおかれている場所や時間の見当がつかなくなってしまうことがしばしばあります。時間の見当がつかなくなると昼と夜が逆転し、場所の見当がつかなくなると、自分の家なのに居場所を求めて徘徊してしまうといった問題行動が出現する原因となります。

3)遂行機能障害

物事を進めるための判断力や実行力が低下します。送られてきた書類が処理できなくなったり、食事の準備ができない、季節や場面にあった衣服を着ることができなくなります。

4)高次機能障害

大脳の障害による運動、感覚、言語の障害が出現します。

今まで使えていた道具や家電製品の使い方が分からなくなるなど、日常生活に支障を来すようになります。計算などの高度な能力が低下し、買い物の場面で計算ができないほどのトラブルが生じるようになります。


周辺症状

中核症状による能力低下が原因で生じる様々な精神症状や問題行動で、元々の性格や患者さんを取り巻く介護環境によって修飾される。周辺症状は原因を分析して、環境を変えたり対応を工夫することで症状が改善することがあります。ただ介護の工夫だけでは症状が治まらないことがあるので、そういった場合は内服薬で症状の軽減を図ります。

1)妄想

本当ではないことを本当だと思い込んでしまう。財布を取られたなどの被害妄想、いないはずの人がいるなど。

2)幻覚

実際にはないものが見えることがあります。虫が居る、男の人が立っているなど。

3)睡眠異常

昼と夜の区別やリズムが崩れてしまった結果、昼夜逆転してしまうことがあります。

4)徘徊

自分のおかれている環境が理解できないために、ここは自分の居るところではないという間違った判断をしてしまい、居場所を求めて歩き回ってしまう。一見無目的に歩き回っているように見えても本人なりの理由があることが多い。

5)暴言、暴力

介護者に対して暴言や暴力を振るうなど攻撃的になることがあります。攻撃性が強い時は介護負担が大きく、患者さん本人も精神的に消耗してしまうので内服薬にて症状の軽減をできるように調整をします。

6)不安、焦燥

物忘れや物事がスムーズに進められないことが繰り返されるために、常に不安や焦りといった感情がつきまとうようになります。判断力も低下しているために、感情の不安定さが介護者への攻撃性の原因となる基盤になることがあります。

7)介護抵抗

入浴や下着を替えるといった清潔に関することが億劫になる傾向があります。必要性が理解できないので、介護者の声かけになかなか同意しないことがしばしば見受けられます。

8)抑うつ、意欲低下

興奮や暴力などと違い、一見目立たないために周辺症状の中では見過ごされがちです。華々しい周辺症状はなくてただ元気がなくなったという患者さんは少なくありません。興奮系の周辺症状は陽性の周辺症状、元気がないタイプの周辺症状は陰性の周辺症状と周辺症状自体も区別して整理しておくことが重要です。




⇒前ページへ戻る